アーティストの一日館内授業①
「注文の多い工作 ~わかりませんが完成はします~」
2025年の9月から11月にかけて、開館30周年を記念した全4回の特別企画ワークショップ「アーティストの一日館内授業」を開催しました。
本ワークショップは、当館がこれまで行ってきた教育普及事業「アーティストの一日学校訪問」のスピンオフ企画として実施されたものです。通常は都内の学校を舞台に展開されるこのプログラムを、美術館という場に持ち込むことで、より多くの方にアーティストと直接関わる体験の場を提供することを目指しました。
◆開発好明氏 ワークショップ記録動画
第1弾の講師を務めたのは、2020年度に「アーティストの一日学校訪問」で講師を担当してくださった美術家・開発好明さん。ユーモアと遊び心にあふれた手法で知られる開発さんによる今回のワークショップでは、参加者がくじを引き、そこに書かれた「ミッション」に沿って作品制作を行うというユニークな形式がとられました。(実施日時:9月6日(土)13:30~16:00)
開発好明氏
このワークショップのタイトルにもなっている「注文の多い工作 ~わかりませんが完成はします~」は、何ができるかは最後までわからない、でも確かに何かが生まれる、という体験そのものを表しています。
参加者はミッションのくじを何度か引き、そのたびに変化していく制作の方向性に翻弄されながらも、工夫を凝らして表現を続けていきます。くじには「◯◯色の素材を使う」「風景について描いてください」などといった制作に関わるものから、「作りかけの作品を3人に見せて、自慢げにうなずいてください」「大きな声で、がんばれーと言ってください」といった身体やコミュニケーションを介したものまで、多岐にわたるミッションが記されていました。
アンケートでも、
- 普段出さないような大きな声を出したり、人に話しかけたり、自分の殻を破るきっかけになった。
- 制作を静かに進めるだけじゃなくて、“動き”があるのが面白かった。
- 一見へんな行動をしているようでも、最後にはみんなで作品ができあがっていた。
など、参加者が創作を通して新しい自分に出会う場にもなっていたことがうかがえます。
また、「工作や絵が苦手でも、なんとか完成できて楽しかった。正解がないのがよかった」というコメントも。制作に自信がなかった方も、ミッションを自由に解釈し、ミッションの指示によって自然と手が動き、思いもよらない作品が生まれていく過程そのものを楽しんでいる様子が印象的でした。
さらに、途中のミッションとして、開発さんがこの日のために作詞・作曲したオリジナルの「館歌」も登場!はじめて出会った参加者全員で声をそろえて歌うという、想定外の展開に驚きつつも、会場全体が一つになる貴重な時間となりました。
- みんなで声を出して歌う、楽しかったな。
- 最初は恥ずかしかったけど、一体感が生まれた。
といった感想も寄せられ、作品制作だけではない特別な“授業”ならではの要素は、良い仕掛けとなったようです。また、当日は幅広い年齢層の方々が集まったことで、それぞれの視点と感性が交差する、豊かな創作の場となりました。
- 子どもと大人のミックスもおもしろかった。
- いろんな年齢の人の作品を見られて刺激的だった。
- 普段は子どもに教える立場なので、参加する側になるのが新鮮だった。
- 一人で作る時とは違い、外的な要素の中で表現することの面白さを体感した。
など、年齢や立場を越えて、表現する楽しさを共有できる機会になったことがアンケートからも伝わってきました。
- たのしすぎる。子どもに戻った気分で夢中になりました。
- 思いもかけないミッションにびっくりしたり悩んだり、いつもと違う脳を使った感じ。
- この授業を受けられる小学生がうらやましく思います。
- “評価されない”空間だからこそ、自由に表現できた。
- 初めてのワークショップだったが、1人ではない作業空間が新鮮で楽しかった。
今回の「アーティストの一日館内授業」は、創作することの“楽しさ”だけでなく、“自由さ”や“偶然性”の大切さを改めて実感する時間となったのではないでしょうか。(M.A)
写真撮影:冨田了平
※全4回をまとめた記録集はデータでご覧いただけます。
ワークショップ記録集.pdf








